概要
- 講座: 基礎講座
- 科目: 高校生物(受験)
- 章: 細胞
- 目安: 16分
- 前提: なし
- 次: ME-BI-02
今日のゴール
主要な細胞小器官の構造と機能を対応づけ、原核/真核・動物/植物の違いを根拠つきで説明できる
受験での位置づけ
細胞小器官は「名前と機能の暗記」で終わらせると、記述問題で一行も書けない。「膜で仕切ることで何が可能になったか」という一本の筋で捉えると、代謝・遺伝・免疫まで同じ論理で説明できるようになる。医学部の生物では、機能と構造を因果で結ぶ記述が繰り返し問われる。
攻略の方針
小器官を一覧で覚えるのではなく、「タンパク質が作られて細胞外へ出るまで」の道筋に沿って並べ替えて覚える。順番に意味があるので、忘れても導き直せる。
前提チェック
- 入口単元(ここから開始してよい)
この回のポイント
- 原核細胞と真核細胞の決定的な差は「核膜で包まれた核を持つか」
- 真核細胞は膜で内部を区切り、反応の場を分けることで複雑な代謝を可能にした
- リボソームは膜を持たない(だから原核細胞にも存在する)
- ミトコンドリアと葉緑体は二重膜・独自のDNAを持つ(共生説の根拠)
- 動物と植物の差は「細胞壁・葉緑体・発達した液胞」の有無
定義・用語
細胞小器官
細胞質内にあり、特定の機能を担う構造体。多くは膜で囲まれており、内部を外と異なる環境に保つことで、その反応に最適な条件をつくれる。
ミトコンドリア
呼吸(酸素を使って有機物からATPを取り出す反応)の場。二重膜構造で、内膜は「クリステ」と呼ばれるひだ状に折れ込み表面積を稼いでいる。独自のDNAとリボソームを持ち、分裂して増える。
核となる手順(答案でこの順)
- その構造は膜を持つか、膜なら一重か二重かを確認する
- 何をする場所か(機能)を一言で書く
- 構造が機能をどう支えているかを結ぶ(例:クリステ → 表面積が増える → 反応効率が上がる)
- 原核/真核、動物/植物のどちらに存在するかを確認する
例題A(標準・型の確認)
分泌タンパク質(例:消化酵素)が合成されてから細胞外へ放出されるまでに関わる構造を、順を追って挙げ、それぞれの役割を述べよ。
解答A
- ① リボソーム タンパク質合成の場。mRNAの情報をもとにアミノ酸をつなぐ。分泌タンパク質の場合、リボソームは小胞体の膜表面に付着している(粗面小胞体)。
- ② 小胞体 合成されたタンパク質を内部に取り込み、折りたたみや初期の糖鎖付加を行いながら輸送する通路となる。
- ③ ゴルジ体 小胞体から送られたタンパク質を受け取り、糖鎖の修飾・濃縮・仕分けを行う。行き先ごとに小胞へ詰め分ける。
- ④ 分泌小胞 ゴルジ体から切り離され、細胞膜まで移動する。
- ⑤ 細胞膜 小胞が細胞膜と融合し、内容物を細胞外へ放出する(エキソサイトーシス)。
- 順序に意味がある 「作る → 折りたたむ → 仕分ける → 運ぶ → 出す」という工場の流れそのもの。この流れで覚えれば、途中を忘れても復元できる。
- 答え リボソーム(合成)→ 小胞体(折りたたみ・輸送)→ ゴルジ体(修飾・仕分け)→ 分泌小胞(運搬)→ 細胞膜(エキソサイトーシスで放出)
例題B(受験・実戦)
$(1)$ 植物細胞にあって動物細胞にない主な構造を3つ挙げ、それぞれの役割を述べよ。
$(2)$ ミトコンドリアと葉緑体に共通する構造上の特徴を2つ挙げ、それが何を示唆するか述べよ。
解答B
- $(1)$
- 細胞壁 セルロースを主成分とする丈夫な外壁。細胞の形を保ち、吸水しても破裂しないように支える。
- 葉緑体 光合成の場。光エネルギーを使って二酸化炭素と水から有機物を合成する。
- 発達した液胞 水・無機塩類・老廃物・色素などを蓄え、浸透圧を調節して膨圧を保つ。成熟した植物細胞では体積の大半を占める。
- $(2)$
- 共通点1:二重膜構造を持つ
- 共通点2:独自のDNAとリボソームを持ち、分裂して増える
- 示唆すること これらはもともと独立した原核生物であり、大きな細胞に取り込まれて共生するようになったと考えられる(細胞内共生説)。独自DNAを持つことは「かつて自分で自分を複製していた」名残と解釈できる。
- 答案での書き方 「二重膜」「独自DNA」の2点を挙げ、結論として共生説に結びつける。この3ステップが記述の型。
- 答え $(1)$ 細胞壁(形の保持)・葉緑体(光合成)・液胞(浸透圧調節と貯蔵) $(2)$ 二重膜と独自DNAを持つこと。細胞内共生説を支持する。
演習(自力再現)
$(1)$ 核の役割を2つ述べよ。
$(2)$ 原核細胞に「ない」ものを3つ挙げ、逆に「ある」ものを1つ挙げよ。
$(3)$ 大腸菌がタンパク質を合成できる理由を、$(2)$ をふまえて説明せよ。
解答
- $(1)$ ① 遺伝情報(DNA)の保持 ② 遺伝子の発現制御(どの遺伝子をいつ転写するかを調節し、mRNAを細胞質へ送り出す)。核膜で囲むことで転写と翻訳の場を分離できる点が真核細胞の特徴。
- $(2)$
- ないもの:核膜で包まれた核/ミトコンドリア/小胞体・ゴルジ体(膜で囲まれた細胞小器官全般)
- あるもの:リボソーム(および細胞膜・細胞壁・DNA そのもの)
- $(3)$ リボソームは膜を持たない構造体なので、膜性の細胞小器官を欠く原核細胞にも存在する。大腸菌はこのリボソームでmRNAを翻訳し、タンパク質を合成できる。核膜がないため、転写された mRNA がそのまま同じ空間で翻訳される点が真核細胞との違い。
- 答え $(1)$ 遺伝情報の保持と発現制御 $(2)$ ない:核・ミトコンドリア・小胞体/ある:リボソーム $(3)$ リボソームは膜を持たないため原核細胞にも存在し、そこで翻訳が行われる
落とし穴(減点パターン)
- 小器官の機能の入れ替え 特に「ミトコンドリア=呼吸/葉緑体=光合成」の取り違え。植物細胞にもミトコンドリアはある(光合成と呼吸は別)
- 原核細胞に核があるとする 原核細胞にも DNA はあるが、核膜に包まれていない。「DNAがない」と書くのも誤り
- 原核細胞にリボソームがないとしてしまう(膜を持たないので存在する)
- 細胞壁を「動物細胞の細胞膜の外側にもある」とする(動物細胞に細胞壁はない)
- 液胞を単なる「袋」と書く(浸透圧調節・膨圧の維持という機能まで書かないと記述では点にならない)
到達チェック(完璧の条件)
- ゴールを何も見ずに言える
- 分泌タンパク質の経路を、順序とその理由つきで白紙に書ける
- ミトコンドリアと葉緑体の共通点から共生説へ論を運べる
- 「原核細胞にリボソームがある理由」を膜の有無から説明できる
- 確認クイズで合格点(4/5以上)
次へ
次は ME-BI-02。本単元の到達チェックをすべて満たしてから進む。
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