概要
- 講座: 基礎講座
- 科目: 高校化学(受験)
- 章: 物質の構成
- 目安: 16分
- 前提: なし
- 次: ME-CH-02
今日のゴール
元素記号の表記から陽子・中性子・電子の数を出し、周期表の位置からイオンの価数を予測できる
受験での位置づけ
化学の計算問題は「粒子を数える」ことから始まる。ここが不安定なままモル計算に進むと、原因の分からない失点が延々と続く。**暗記ではなく、$^{A}_{Z}\mathrm{X}$ という表記の読み方ひとつで全部片づく**単元。
攻略の方針
周期表を「覚えるもの」ではなく「予測に使う道具」として扱う。族番号から価電子数が分かり、価電子数からなりやすいイオンが分かる。この因果を通せば、暗記量が一気に減る。
前提チェック
- 入口単元(ここから開始してよい)
この回のポイント
- 原子番号 $Z$ = 陽子数(元素の正体を決める。ここが変われば別の元素)
- 質量数 $A$ = 陽子数 + 中性子数(したがって 中性子数 $=A-Z$)
- 中性の原子では 電子数 = 陽子数 $=Z$
- イオンになっても陽子数は変わらない。増減するのは電子だけ
- 典型元素は 族番号 → 価電子数 → なりやすいイオンの価数、と一直線につながる
定義・用語
同位体
原子番号(陽子数)が同じで質量数が異なる原子どうし。中性子数だけが違う。化学的性質はほぼ同じで、質量が異なる。例:$^{12}\mathrm{C}$ と $^{14}\mathrm{C}$。
価電子
最外殻にあり、結合やイオン化に関わる電子。典型元素では **1〜2族は族番号と一致、13〜18族は(族番号 $-10$)** に等しい(ただし18族の希ガスは価電子 $0$ として扱う)。
核となる手順(答案でこの順)
- $^{A}_{Z}\mathrm{X}$ の $Z$ から陽子数を読む
- 中性子数 $=A-Z$ を計算する
- 電荷を見る。$n+$ なら電子を $n$ 個失った、$n-$ なら $n$ 個受け取った
- 電子数 $=Z-(電荷)$ で求める
- 周期表の族から価電子数を確認し、その価数が妥当か検算する
例題A(標準・型の確認)
$^{12}_{6}\mathrm{C}$ と $^{14}_{6}\mathrm{C}$ について、それぞれ陽子数・中性子数・電子数を答えよ(いずれも電気的に中性)。両者の関係を何と呼ぶか。
解答A
- 手順1 どちらも $Z=6$ なので**陽子数はともに $6$**。ここが $6$ である限り、元素は炭素で確定する。
- 手順2 中性子数 $=A-Z$ より
- $^{12}\mathrm{C}$:$12-6=6$ 個
- $^{14}\mathrm{C}$:$14-6=8$ 個
- 手順3・4 どちらも中性なので 電子数 = 陽子数 $=6$。
- 関係 陽子数が同じで質量数(=中性子数)だけ違うので、両者は同位体。
- なお $^{14}\mathrm{C}$ は中性子が過剰で不安定なため放射性を示す(年代測定に使われる)。陽子数が同じだから化学的性質はほぼ同じという点が同位体の要点。
- 答え $^{12}\mathrm{C}$:陽子6・中性子6・電子6/$^{14}\mathrm{C}$:陽子6・中性子8・電子6。両者は同位体。
例題B(受験・実戦)
$(1)$ $\mathrm{Na^{+}}$($Z=11$)の電子数を求めよ。
$(2)$ $^{32}_{16}\mathrm{S^{2-}}$ の陽子数・中性子数・電子数を求めよ。
$(3)$ $(1)(2)$ で得た電子配置が、それぞれどの希ガスと同じか答えよ。
解答B
- $(1)$ $\mathrm{Na}$ は原子番号 $11$ なので陽子 $11$ 個。$+$ の電荷は「電子を $1$ 個失った」意味だから
$$電子数=11-1=10$$
- $(2)$ $Z=16$ より陽子 $16$ 個。中性子数 $=32-16=16$ 個。$2-$ は「電子を $2$ 個受け取った」意味なので
$$電子数=16-(-2)=16+2=18$$
- 符号の扱い 電子数 $=Z-(電荷)$ に電荷をそのまま代入する。$2-$ は $-2$ だから引くと増える。ここを機械的にやれば符号ミスは起きない。
- $(3)$ $\mathrm{Na^{+}}$ の電子は $10$ 個 → **ネオン $\mathrm{Ne}$**($Z=10$)と同じ。$\mathrm{S^{2-}}$ の電子は $18$ 個 → **アルゴン $\mathrm{Ar}$**($Z=18$)と同じ。
- なぜこの価数になるか $\mathrm{Na}$ は1族で価電子 $1$。$1$ 個手放せば希ガスと同じ安定な配置になるので $1+$ になりやすい。$\mathrm{S}$ は16族で価電子 $6$。あと $2$ 個受け取れば $8$ 個(オクテット)になるので $2-$ になりやすい。族番号を見れば価数は予測できる。
- 答え $(1)\ 10$ 個 $(2)$ 陽子16・中性子16・電子18 $(3)$ 順に $\mathrm{Ne}$、$\mathrm{Ar}$
演習(自力再現)
$(1)$ $\mathrm{Mg}$(2族)と $\mathrm{Cl}$(17族)は、それぞれ何価のどんなイオンになりやすいか、価電子数を根拠に説明せよ。
$(2)$ $(1)$ の2つが結びついてできる化合物の組成式を答えよ。
$(3)$ イオン結合とはどのような結合か、一文で説明せよ。
解答
- $(1)$
- $\mathrm{Mg}$ は2族なので価電子 $2$ 個。$2$ 個手放すと $\mathrm{Ne}$ と同じ配置になるので $\mathrm{Mg^{2+}}$。
- $\mathrm{Cl}$ は17族なので価電子 $17-10=7$ 個。あと $1$ 個受け取ると $\mathrm{Ar}$ と同じ配置になるので $\mathrm{Cl^{-}}$。
- $(2)$ 化合物全体は電気的に中性でなければならない。$\mathrm{Mg^{2+}}$ の $+2$ を打ち消すには $\mathrm{Cl^{-}}$ が $2$ 個必要。よって $\mathbf{MgCl_2}$。
- $(3)$ 陽イオンと陰イオンが静電気的な引力(クーロン力)で引き合ってできる結合。金属元素と非金属元素の間で生じやすい。
- 答え $(1)\ \mathrm{Mg^{2+}}$、$\mathrm{Cl^{-}}$ $(2)\ \mathrm{MgCl_2}$ $(3)$ 陽イオンと陰イオンの静電気的引力による結合
落とし穴(減点パターン)
- 質量数と原子量の混同 質量数は整数(陽子+中性子の個数)。原子量は同位体の存在比で平均した値なので $35.5$ のように小数になりうる
- イオン化で陽子数が変わると思う 変わるのは電子だけ。陽子が変われば別元素になってしまう
- $2-$ のイオンの電子数を $Z-2$ と計算する($-$ のイオンは電子が増える。$Z+2$ が正しい)
- 中性子数を $A$ そのものと答える($A-Z$ が中性子数)
- 18族の価電子を $8$ として計算に使う(希ガスは反応しないので価電子 $0$ 扱い)
到達チェック(完璧の条件)
- ゴールを何も見ずに言える
- $^{A}_{Z}\mathrm{X^{n\pm}}$ という表記から3種の粒子数を即座に出せる
- 電子数 $=Z-(電荷)$ を符号込みで正しく使える
- $\mathrm{Na}$ が $1+$、$\mathrm{S}$ が $2-$ になる理由を、族と価電子から説明できる
- 確認クイズで合格点(4/5以上)
次へ
次は ME-CH-02。本単元の到達チェックをすべて満たしてから進む。
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