概要
- 講座: 基礎講座
- 科目: 高校物理(受験)
- 章: 力学の基礎
- 目安: 16分
- 前提: なし
- 次: ME-PH-02
今日のゴール
単位換算を機械的に実行でき、次元で式の正しさを検算し、有効数字を正しい桁で答えられる
受験での位置づけ
物理の失点の相当数は「物理が分からない」ではなく「単位を揃え忘れた」「桁を勝手に増やした」で起きる。ここは知識ではなく作業手順の単元であり、力学から電磁気まで全分野の計算にそのまま効く。
攻略の方針
次元解析は答案に書かなくても、検算として必ず頭の中で回す。導いた式の両辺の単位が合わなければ、その時点で式が間違っている。試験中に自力でミスを発見できる、ほぼ唯一の道具。
前提チェック
- 入口単元(ここから開始してよい)
この回のポイント
- SI基本単位は 長さ $\mathrm{m}$・質量 $\mathrm{kg}$・時間 $\mathrm{s}$(力学ではこの3つで足りる)
- 組立単位は基本単位の積・商に必ず分解できる(例:$\mathrm{N}=\mathrm{kg\cdot m/s^2}$)
- 単位換算は「$1$ に等しい分数」を掛けて約分する操作にすぎない
- 有効数字は掛け算・割り算では最も桁数の少ない値に合わせる
- 足し算・引き算は桁数ではなく小数点以下の位で合わせる(規則が違う)
定義・用語
次元
物理量の種類を、長さ $\mathrm{L}$・質量 $\mathrm{M}$・時間 $\mathrm{T}$ の組み合わせで表したもの。速度の次元は $\mathrm{LT^{-1}}$、力の次元は $\mathrm{MLT^{-2}}$。次元の異なる量は足し引きできないため、式の両辺・各項の次元が一致するかを見れば誤りを検出できる。
有効数字
測定値のうち意味を持つ桁。$0.0120\ \mathrm{m}$ の先頭の $0$ は位取りにすぎず、有効数字は $1,2,0$ の3桁。末尾の $0$ は「そこまで測った」という主張なので落としてはいけない。
核となる手順(答案でこの順)
- 与えられた量に単位を付けて書き出す
- 換算の分数($\frac{1000\ \mathrm{m}}{1\ \mathrm{km}}$ など)を掛け、消したい単位を約分する
- 計算し、答えの単位が求められている単位になっているか確認する
- 有効数字を、掛け割りなら最少桁数・加減なら最も粗い位に合わせて丸める
例題A(標準・型の確認)
速度 $36\ \mathrm{km/h}$ を $\mathrm{m/s}$ に直せ。また、換算係数 $3.6$ がどこから出るかを説明せよ。
解答A
- 手順1 $36\ \mathrm{km/h}$ は「$1$ 時間あたり $36\ \mathrm{km}$」の意味。
- 手順2 $\mathrm{km}\to\mathrm{m}$ は $\dfrac{1000\ \mathrm{m}}{1\ \mathrm{km}}$、$\mathrm{h}\to\mathrm{s}$ は $\dfrac{1\ \mathrm{h}}{3600\ \mathrm{s}}$ を掛ける。どちらも値は $1$ なので、掛けても量は変わらない。
$$36\ \frac{\mathrm{km}}{\mathrm{h}}\times\frac{1000\ \mathrm{m}}{1\ \mathrm{km}}\times\frac{1\ \mathrm{h}}{3600\ \mathrm{s}}=36\times\frac{1000}{3600}\ \frac{\mathrm{m}}{\mathrm{s}}$$
- 手順3 $\mathrm{km}$ と $\mathrm{h}$ が約分で消え、残る単位は $\mathrm{m/s}$。求められた単位と一致するので換算の向きは正しい。
- $\dfrac{1000}{3600}=\dfrac{1}{3.6}$ なので $36\div 3.6=10$。
- **「$3.6$ で割る」の正体** $3.6=\dfrac{3600}{1000}$、すなわち「時間の換算数 $3600$ ÷ 長さの換算数 $1000$」。丸暗記ではなく毎回この分数から出せるようにしておく。逆向き($\mathrm{m/s}\to\mathrm{km/h}$)なら $3.6$ を掛ける、と迷わず決められる。
- 答え $10\ \mathrm{m/s}$。$3.6=3600/1000$ より。
例題B(受験・実戦)
力の単位 $\mathrm{N}$ を SI 基本単位で表せ。さらにばね定数 $k$ の単位を求め、単振動の周期 $T=2\pi\sqrt{m/k}$ が次元的に正しいことを確かめよ。
解答B
- **$\mathrm{N}$ の分解** 運動方程式 $F=ma$ より、$F$ の単位は(質量の単位)×(加速度の単位)。
$$[\,\mathrm{N}\,]=\mathrm{kg}\times\frac{\mathrm{m}}{\mathrm{s^2}}=\mathrm{kg\cdot m/s^2}$$
- ばね定数 フックの法則 $F=kx$ より $k=F/x$ なので
$$[\,k\,]=\frac{\mathrm{kg\cdot m/s^2}}{\mathrm{m}}=\mathrm{kg/s^2}$$
- 周期の検算 $2\pi$ は無次元なので無視してよい。根号の中身の単位は
$$\frac{[\,m\,]}{[\,k\,]}=\frac{\mathrm{kg}}{\mathrm{kg/s^2}}=\mathrm{s^2}$$
- $\sqrt{\mathrm{s^2}}=\mathrm{s}$ となり、周期の単位 $\mathrm{s}$ と一致する。式は次元的に正しい。
- ここで仮に $T=2\pi\sqrt{k/m}$ と覚え違えていれば、単位は $\mathrm{s^{-1}}$ となって周期になり得ない。公式のうろ覚えをその場で潰せるのが次元解析の実戦価値である。
- 答え $\mathrm{N}=\mathrm{kg\cdot m/s^2}$、$k$ の単位は $\mathrm{kg/s^2}$($=\mathrm{N/m}$)。$\sqrt{m/k}$ の単位は $\mathrm{s}$ で周期と一致する。
演習(自力再現)
$(1)$ 密度の単位を SI 基本単位で答えよ。
$(2)$ 縦 $2.5\ \mathrm{cm}$、横 $4.20\ \mathrm{cm}$ の長方形の面積を、有効数字を考えて答えよ。
$(3)$ $12.3\ \mathrm{cm}+4.567\ \mathrm{cm}$ を有効数字を考えて答えよ。
解答
- $(1)$ 密度は $\dfrac{質量}{体積}$ なので $\dfrac{\mathrm{kg}}{\mathrm{m^3}}=\mathrm{kg/m^3}$。
- $(2)$ 積は $2.5\times 4.20=10.5$。掛け算なので桁数の少ない方に合わせる。$2.5$ が2桁、$4.20$ が3桁だから答えは2桁。$10.5\to 11$。よって $11\ \mathrm{cm^2}$。
- $(3)$ 和は $16.867$。足し算は桁数ではなく位で合わせる。$12.3$ は小数第1位まで、$4.567$ は小数第3位まで。粗い方の小数第1位に合わせて $16.867\to 16.9$。よって $16.9\ \mathrm{cm}$。
- $(2)$ と $(3)$ で規則が違うことがこの回の核心。掛け割りは「桁数」、加減は「位」。$(3)$ を「2桁だから $17$」とするのが最頻出の誤り。
- 答え $(1)\ \mathrm{kg/m^3}$ $(2)\ 11\ \mathrm{cm^2}$ $(3)\ 16.9\ \mathrm{cm}$
落とし穴(減点パターン)
- $\mathrm{km/h}$ と $\mathrm{m/s}$ を混在させたまま公式に代入する(換算は代入前に済ませる)
- 電卓の表示をそのまま写して有効数字を無闇に増やす(測っていない桁を書くのは誤りの主張になる)
- 加減にも「桁数の少ない方」を適用する(加減は位で合わせる)
- $0.0120$ の有効数字を2桁と数える(末尾の $0$ は有効なので3桁)
- 次元が合わない式を書いたまま先へ進む(例:$v=at^2$ は左辺 $\mathrm{LT^{-1}}$、右辺 $\mathrm{LT}$ で不一致)
到達チェック(完璧の条件)
- ゴールを何も見ずに言える
- $3.6$ という数字を暗記に頼らず換算分数から導ける
- $T=2\pi\sqrt{m/k}$ の次元検算を白紙で再現できる
- 掛け割りと加減で有効数字の規則が違うことを、例つきで説明できる
- 確認クイズで合格点(4/5以上)
次へ
次は ME-PH-02。本単元の到達チェックをすべて満たしてから進む。
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