ME-M1-04 展開公式 $(a\pm b)^2$ と $(a+b)(a-b)$
- ブランド: Medvance
- 科目: 高校数学I
- 章: 数と式
- 目安: 18分
- 前提: ME-M1-03
- 次: ME-M1-05
今日のゴール
3公式を見極めて適用し、係数・符号ミスを防げる
受験での位置づけ
$(a+b)^2$、$(a-b)^2$、$(a+b)(a-b)$ は展開の「高速道路」だが、**真ん中の $2ab$ を落とす**答案がいまだに多い。公式は暗記ではなく、分配から一度導いてから使う。見た目が似ているだけで公式に無理当てすると、かえって遅くなる場面もある。
攻略の方針
使う前に形を宣言する。「これは和の二乗」「これは差の積(平方の差)」。(a+b)^2 を a^2+b^2 と書くミスは、導出を一言添えるだけで防げる。係数付きは $a=2x$ のように置き直す。
前提チェック
ME-M1-03:分配で 2×2 を確実に展開できる
- 同類項のまとめ(02)ができる
この回のポイント
- $(a+b)^2=a^2+2ab+b^2$(真ん中は プラス の $2ab$)
- $(a-b)^2=a^2-2ab+b^2$(真ん中は マイナス の $2ab$)
- $(a+b)(a-b)=a^2-b^2$(中間項が打ち消える)
- 係数付き:$(2x+3)^2$ は $a=2x,\,b=3$ と置く
- 公式に見えてズレている形は分配に戻る(例:$(x+2)(x+3)$ は次の05)
- 導出:$(a+b)^2=(a+b)(a+b)=a^2+ab+ba+b^2=a^2+2ab+b^2$
定義・用語
展開公式(基本3つ)
多項式の積のうち、特に頻出の形を結果の式として固定したもの。根拠は分配法則であり、公式は分配の省略記法である。
公式ボックス
- $(a+b)^2=a^2+2ab+b^2$
- $(a-b)^2=a^2-2ab+b^2$
- $(a+b)(a-b)=a^2-b^2$
- 置き換え:$(2x-1)^2$ では $a=2x,\,b=1$
核となる手順
- 式が3公式のどれに当たるか判定する
- $a$ と $b$ に何が入るかを明示する(係数・符号込み)
- 公式どおりに書き下す(特に $2ab$ の係数と符号)
- 必要なら同類項をまとめ、降べきにする
- 不安なら分配で1回検算する
- $x=1$ などの代入でも検算できる
例題A(標準)
次を展開せよ。
(1) $(x+3)^2$ (2) $(2x-1)^2$ (3) $(3x+1)(3x-1)$
解答
- (1) $a=x,\,b=3$。$(x+3)^2=x^2+2\cdot x\cdot 3+3^2=x^2+6x+9$
- (1) 真ん中は $2ab=6x$。$x^2+9$ だけで終わらせない
- (2) $a=2x,\,b=1$。$(2x-1)^2=(2x)^2-2\cdot(2x)\cdot 1+1^2=4x^2-4x+1$
- (2) $(2x)^2=4x^2$ を $2x^2$ と書くミスが多い。二乗は係数にもかかる
- (3) $(a+b)(a-b)$ 型で $a=3x,\,b=1$。$a^2-b^2=9x^2-1$
- (3) 分配すると中間の $3x$ と $-3x$ が消え、同じ結果になる
答え (1) $x^2+6x+9$ (2) $4x^2-4x+1$ (3) $9x^2-1$
例題B(受験)
$(x+2)^2-(x-2)^2$ を展開・整理せよ。また、公式を使わずに差の形で簡約する方針も述べよ。
解答
$(x+2)^2=x^2+4x+4$、$(x-2)^2=x^2-4x+4$
$x^2+4x+4-x^2+4x-4=8x$
- $x^2$ と定数が消え、$4x+4x=8x$
- 別解:$A^2-B^2=(A-B)(A+B)$ と見る。$A=x+2,\,B=x-2$
$A-B=4$、$A+B=2x$ より $(A-B)(A+B)=4\cdot 2x=8x$
- 受験では「展開してから引く」より「平方の差」に気づく方が速い場合がある
- 検算:$x=3$ で $(5)^2-(1)^2=25-1=24$、$8\cdot 3=24$
答え $8x$(別解:$A^2-B^2$ で $A=x+2,\,B=x-2$)
演習
(1) $(x-5)^2$ を展開せよ。
(2) $(3x+2)^2$ を展開せよ。
(3) $(2x+3)(2x-3)-(x+1)^2$ を展開・整理せよ。
解答
- (1) $a=x,\,b=5$。$x^2-10x+25$(真ん中は $-2ab=-10x$)
- (2) $a=3x,\,b=2$。$9x^2+12x+4$($2ab=2\cdot 3x\cdot 2=12x$)
- (2) $(3x)^2=9x^2$。$3x^2$ と書かない
- (3) 前半は平方の差:$4x^2-9$。後半 $(x+1)^2=x^2+2x+1$
- (3) $4x^2-9-(x^2+2x+1)=4x^2-9-x^2-2x-1=3x^2-2x-10$
- (3) 後ろの二乗全体にマイナスがかかる。$+2x$ が $-2x$ になる
答え (1) $x^2-10x+25$ (2) $9x^2+12x+4$ (3) $3x^2-2x-10$
公式を「見る」ためのチェックリスト
次の質問に即答できれば、公式の使い分けは十分である。
- 同じかっこが2回続いているか → 二乗系
- 中の符号は同じか逆か → $(a+b)^2$ か $(a-b)^2$ か
- 和と差が並んでいるか → $(a+b)(a-b)=a^2-b^2$
- $a$ に係数が乗っているか → 置き換えてから公式($(2x)^2=4x^2$)
- どれにも当てはまらないか → 分配に戻る(次の05の形を含む)
特に4が甘いと、$(2x+3)^2$ を $2x^2+6x+9$ のような壊れた式にしやすい。二乗は「まとまり全体」にかかり、係数にも指数2が乗る。
導出を答案に残す価値
$(a+b)^2=(a+b)(a+b)=a^2+ab+ba+b^2=a^2+2ab+b^2$
この一行を一度書いておくと、$2ab$ を落とすミスが激減する。暗記カードだけに頼らず、導出を「再生成できる知識」にしておく。
同様に $(a-b)^2=(a-b)(a-b)=a^2-ab-ba+b^2=a^2-2ab+b^2$ も、真ん中がマイナスになる理由が分配から見える。$(a+b)(a-b)=a^2-ab+ba-b^2=a^2-b^2$ では、中間が打ち消える様子が一行で説明できる。公式名を言うだけでなく、この「中で何が起きるか」を口に出せると、係数付きでも壊れにくい。不安な1問だけ分配に戻して検算する習慣も、得点を安定させる。公式は速さのための道具であり、正しさの最終根拠は常に分配にある。
落とし穴(減点パターン)
- $(a+b)^2=a^2+b^2$ と書いて $2ab$ を落とす
- $(a-b)^2$ の真ん中の符号をプラスのままにする
- $(2x)^2$ を $2x^2$ と書く(正しくは $4x^2$)
- 公式に無理当てし、$(x+2)(x+3)$ を二乗公式で処理しようとする
- 引き算で第2の二乗の中間項だけ符号を変え忘れる
到達チェック(完璧の条件)
- 3公式を導出つきで言える
- 係数付き二乗を置き換えで処理できる
- 例題Bのように $A^2-B^2$ の別解を選べる
- 落とし穴5型のうち3つ以上を説明できる
- 確認クイズで合格点(4/5以上)
次へ
次は ME-M1-05($(x+a)(x+b)$ と $(a\pm b)^3$)。二乗公式の次に使う展開の定番を固める。
本単元の完成度は、初見の数値替えに即座に手順を再生できるかで測る。定義を先に言い、境界を書き、計算し、検算する。この四拍子を崩さない。受験では速さより先に型の安定が得点を守る。ミスの多くは計算力不足ではなく宣言の省略から起きる。だから答案の一行目に方針を置く。図や数直線が有効なら小さく描く。単位と含む含まないを忘れない。学習時間は短くてもよいので、毎回同じ型を三回再現する。三回目で手が止まらなければ次単元へ進む。止まれば例題に戻り、どの行で定義から離れたかを特定する。教材は繰り返し使う前提で書かれている。数式は読み上げ可能な形で整理し、係数と指数を混同しない。置換をしたら必ず戻す。絶対値は外したら領域を明記する。二次関数は頂点と軸を先に固定し、三角比は辺の名前を先に固定する。データの問題は設問ラベルを先に固定する。